「ねぇ」
「なに?」
「どうして神様は、男と女とを作ったのかな」
「どうしてだろうね」
「どうせ作るのなら、どうして完全なものを作らなかったのかな」
「…」
「二つの凹凸をあわせて初めて完全な一つになる。そんな不完全な二つの生き物を作ったのには、何か意味があるのかな」
「…うーん…、強いて言うなら…見たかったのかもしれない。」
「見たかった?」
「そう。見たかったの。自分の手を離れた、不完全な生き物がどうやって生きるのかを…、 作り手である自分には思いもよらない事を起こすのを、創造物たるヒトに求めていたのかも知れない。いわば、可能性に賭けた、と言うことかな」
「…解らないな」
「…うん?」
「理解できない。いや、解りたくない。もし、もしヒトが完全なものとして生まれて来ていたのなら、きっとこんな風に争いあう事もなかったんじゃないの?きっとこんな風に…苦しむ事もなかったんじゃないのか?」
「…そうかもね。」
「…不完全なものを作れば、必ず何かしらの綻びが生じる。それを解っていて送り出すなんて……残酷だね。」
「…。」
「…だけどね、それでも、こうやって悩みながら、苦しみながら生きるヒトを嫌いにはなれないんだ。」
芽吹く大地の美しさを、流す涙と汗の尊さを、人を愛すことの喜びを、知ってしまっているから。
「…そうだね。それには、同感だよ。」







inserted by FC2 system